角川春樹事務所から出ている『ランティエ叢書』シリーズの一冊です。
村井弦斎は、明治時代の超食道楽です。
しかし単なる道楽者ではなく、栄養バランスについてや、どんな時にどんなものを食べるべきか・・・など、『道楽』の域を超えた、食の探求者だったようです。
この『食道楽の献立』は、
●小説『食道楽』からの抜粋
●料理人の心得
●自然食指南
●365日の献立
という構成です。
『食道楽』は明治時代に新聞連載された小説で、当時は爆発的な人気だったそう。
読めばわかりますが、『小説』と銘打たれているものの、小説にかこつけた料理指南書といったほうがわかりやすいくらいです。
でも意外に物語も面白いんですよ。
まあ、とりあえずどのページを開いても、料理のレシピが出てきます。
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「きのうの残り肉料理。ビーフスカラップでも申し上げましょう」
まず牛肉料理の残りをこまかに切る。別にメリケン粉をバターで炒め、牛乳を溶かし、塩、コショウで味をつけ、白ソースを作り、前の肉を和え、小さな帆立貝を入れ、テンパンに並べ、上へパン粉を振りかけ、テンピで十分間焼く。
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美味しそうですよね~・・・。
しかもハイカラなんですよ。シタフトトマト(スタッフドトマト)やら、鳥と米のコロッケやら子牛のシブレ(リー・ド・ヴォー)やら・・・。
けれどハイカラものだけでなく、基本の料理や、何故この食材をこの季節に食べるのか・・・などの講釈もあり、読み応え満点です。
そして圧巻は『365日の献立』です。
本当に365日分あります。もちろん三食全部ではなく、一日のうちの一食分ですが。
ちなみに、
2/11『豚と蛤』
茹でた豚を醤油と酒で煮る。別に蛤を油で炒り豆腐と大根と共に豚へ交ぜてよく煮る。
2/12『チキンブロー』
雛鳥を骨付きの儘小さくブツブツに切り、米五勺、水五合と共に塩、胡椒を加え二時間余りも煮る。腹中を温める事、妙なり。
とても・・・美味しそうです。現在でもそのまま使えます。
明治時代にこれだけ『食』を追求し、自家菜園を作り、家畜まで飼っていた村井弦斎。
食育が重要視され、食への安全性が問われる今こそ、必要な人物ではないでしょうか。
凄い人がいたものです。
食道楽の献立
著者 村井弦斎
出版社 角川春樹事務所
ランティエ叢書 1000円+税
※この本は厳密に言うと『著/村井弦斎』ではないかもです。
 小説の部分抜粋であり、他の著書との掛け合わせだったりするので、
 著者本人の本意が失われている可能性があります。
 『食道楽』全編通して読みたい方は、岩波文庫の『食道楽』(上・下)をお薦めします。