本の第一回目です。
何にしようか散々悩みました。
ブリア・サヴァラン?開高健?池波正太郎?向田邦子?ミシュランいっちゃおうか・・・?
結論。
東海林さだおの『丸かじり』シリーズです。
これを読まずして、食べ物の本は語れません。
しかしグルメ本に『絶対』ならないところがすごいです。
王道にして異端。
大根を褒め、ビン詰めフェチを披露し、ハムカツの薄いアジアジを愛し、素麺に釈然としない思いを抱き、フルーツ缶のシルを隠れてすすり・・・。
全然グルメ方面に行かないのです。
きっと東海林さだお本人は、名もあり地位もありお金もあるでしょう。美味しいものも一杯食べているでしょう。
しかし彼が語るのは、『フツーの食べ物』であり、『身の回りのモノたち』です。
海外赴任や入院生活のお供とされるのが多いのも頷けます。
私自身、『丸かじり』との最初の出会いは、盲腸で入院したときでした。
父が退屈しのぎに持ってきてくれたのです。
さあ、それからが大変でした。手術後で何も食べられない、けれど読めば読むほど唾が湧く・・・拷問です。
どれだけ父を恨んだことか。
が、魔力に取り付かれたら最後、シリーズ全部を読みつくさないとこの飢えは治まりません。
読みつくしても、時々本棚から取り出しては拾い読みをし・・・拾い読みのつもりが気が付くと熟読になっていることもしばしば。
あと、このシリーズのすごいところは『おかず』になるのです。
一人ぼっちのお昼ご飯。
米はあるけれどもおかずがない・・・なんて時に、どれでも良いから一冊開いてみてください。
あっという間に、おかず登場です。
『読めるおかず』です。
私も何度お世話になったか知れません。
私の中のおかず度として最も高いのは、『アジフライ』について語っている回です。
おっさんがアジフライのシッポを口から見せつつ、むせび泣いているイラストがたまりません。
文字でイラストで読者の食欲中枢を翻弄する東海林さだお・・・恐るべしです。
現在文春文庫にて何冊だっけ・・・?30冊以上出ています。
全部持っています。
週刊誌の長寿連載なので、読んだ巻によって、その時代の流行や文化が垣間見えます。
一冊で二度も三度も美味しいです。
まだお読みでない方は、是非。