11月12日。
M子の住む集落で、10年だか12年に一度の『お稚児さん』という行事がありました。
すごい端折って説明すると、偉いお坊さんが来て、12歳以下の子供たちは綺麗な衣装を着て、集落内を練り歩く・・・というもの。
ただ、子供らにとってはワケのわからない衣装を着せられ、頭には重い冠を載せられるという、苦行以外の何モノでもないらしく、泣いて嫌がる子もいます。
で、m子は11歳。もれなく参加です。
そりゃあイヤだったら辞退することもできますが、移住者である私たちは、もともと住んでいる人たち以上に積極的に参加する必要があり・・・。
そんな親の事情を飲んでくれたm子はエライです。
というわけで、m子に「何が食べたい?」とたずねたところ。
「やまきの茶碗蒸し!2つ!」と。
この先の彼女の人生に不安を感じつつ。

来ました『やまき』。
ムハハハハ。
私も、めちゃめちゃ来たかったので、実は前の日に予約していたのです。
なので、娘の発言は、願ったり叶ったりでした。
こんなところでも親孝行なm子・・・エライぞ!


突き出し。
左の貝柱とわけぎのヌタが美味しい!
何の貝柱だっけ・・・よく知っているのに思い出せないもどかしさ!
奥の真薯も、明太子がプチプチしていて、食感が良かったです。


『初冬の炊合せ』
蕪の季節ですねぇ。
真ん中に射込まれている、甘味噌・・・木の実が入っているのか、コクがあります。
アッサリとしがちな蕪の繊維に染みこんで、いい味です。
添えられているのは、合鴨。これまた、ややジビエの香りがあって好み。


『薩摩軍鶏』
以前は宮崎地鶏だったっけ・・・。
毎回、鶏の塩焼きをいただいている娘曰く、「こっちのほうが味が濃くて美味しい!」とのこと。
確かに歯応え、味ともに、こちらの方がしっかりしている気が。


『鴨の治部煮、白味噌仕立て』
こ、これは・・・。


なんかもう、「すみません!」って言いたいくらい美味しいです!
白味噌仕立てながら、甘さ控えめで出汁を引き立てる感じ。
葛をまとった合鴨ちゃんは柔らかくもしっかりとした肉質で、ほのかな獣の香り・・・これがまた白味噌出汁に合います!
で、表面の焼き目にしっかり汁を含ませつつも、やわやわにならないお餅・・・米の甘さがスゴイです。
私はクセのある味が好きなので、青菜は春菊の方が好みかな。
しっかし美味しいです。
まだ試作中とのことということは、これからもっと美味しくなるの!?
どうやって!?
そしてこの出汁!汁なのにお酒が進む、禁断の味です!
だがしかし。
驚きはまだまだ続きます。


『穴子の利休揚げ』
驚愕のルックス。
黒いです。
「利休」というからには「ゴマ」よね・・・とは想像していましたが、ここまで『超胡麻!』だとは!
はっきり言って、口に入れるのがちょっと恐い・・・などと躊躇しつつも一口。
・・・うおおお、この美味しさは何なのだ!?
胡麻が全然きつくありません!
サックリとした胡麻衣が、やや脂が落ちて淡白な穴子を補強している感じ?
とにかく見た目とは裏腹に、胡麻はあくまでも穴子の引き立て役に徹していつつ、最後にその風味が。
これは食べないと後悔しますよ!でこさん!


ほんでもって、先程の『治部煮』の汁に、さらに一手間したのがこちら。
牡蠣の卵とじ!
火が通った瞬間のプルップルな牡蠣ちゃんに、ホロホロと口の中で崩れる卵と、それと同じくらいな柔らかさのお豆腐・・・。
牡蠣はおそらく、広島とかそっち産。
三重県産にはない、「牡蠣らしい牡蠣」の味がします。
牡蠣が好きな人には、たまらない一品かと。
今まで『牡蠣の土手鍋』に一切食指が動かなかった私が、この牡蠣を食べた瞬間に、
「土手鍋を食べてみたい」
と思いました。
つまり、そういう牡蠣だったのです。


『秋刀魚の七味焼き』
脂の乗りまくった秋刀魚に七味がピリリと。
秋刀魚は軽く味噌で漬けてある?それとも醤油&酒とかが塗ってあるのかしら?
身に、更に旨みが染み込んでいて、食べ終わってしまうのが惜しいほどの美味しさ。
身をほぐして日本酒と共に、チビチビいただきます。


ここに来て、ようやく『お造り』。
白身の好きな夫の「天然真鯛」と、M子LOVEの「しめ鯖」。
この鯖は、やまちゃんも言ってましたが、この季節では珍しいくらい脂がなく。
これはこれで、かえって鯖の味がダイレクトに感じられて貴重かも!
身の味が脂に邪魔されないのですよ。
さらに、ここでしかいただいたことのない「鰆」。
私の中では、超順位の高いお刺身です。
カツオとサバの間の味わいで、臭みがなく・・・しかして、お刺身で味わうには鮮度が落ちやすく。
なので、こうしていただけるのは、めっちゃ嬉しいです!


そして、まさかの『鮟鱇肝』。
普通ならしょっぱなに注文するのに、何故、今。
この鮟肝も、まだ脂が乗りきっているとはいえない「走りの味」。
身体に悪くなさそうなのが嬉しい(笑)
とはいえ、今回はすべて、魚や作物が「冬」に向けての準備をしている、狭間の味・・・。
ある意味、超期間限定モノが多かったのでは。


期間限定といえば、是非物の『土瓶蒸し』。


シャクシャク松茸に海老ちゃんに銀杏ちゃんに、おそらく天然真鯛。
めっちゃ良い香り~~・・・とうっとりしていたら。
m子がハンターのごとく狙っていました。
彼女は、土瓶蒸しの汁が大好きなのです。
この記事の最初でも書きましたが、この先の彼女の人生に不安を感じます。


締めはもちろん『辛みおろし大根蕎麦』。
胃の中でごっちゃになっていた諸々が、スーっと落ち着く味わい。
ああ・・・今回も美味しかった・・・。
秋と冬の間の、ほんのいっときの間の味を楽しむことができました。
ご馳走様でした[#IMAGE|S58#]
やまき

※ブログ『やまきのおかあちゃんの日記』へ